「走り幅跳び」の跳び方の基本となる「助走歩数」について説明します。


1. 「助走歩数」とは

助走歩数を変化させた短~長助走跳躍の練習トレーニング法について説明します。

歩数を少なくしたり、多くしたりする上達するための考え方です。

走り幅跳びにおいて高いパフォーマンスを達成するためには,高い助走速度が必要となります。

そのために試合では,高い助走速度を得るために,16歩~20歩ほどの歩数が用いられています。

しかし,踏切動作の修正を目的としたトレーニングを行う場合,試合で行う助走歩数のままでは速度が高く,踏切動作の修正が困難になります。

そこで,助走の歩数を少なくし速度を調節した短助走跳躍が用いられます。

踏切動作が修正可能な範囲で助走歩数(助走速度)を調節し,徐々に歩数を増やして高い速度条件へ対応できることを目指し,最終的には試合での高速条件における踏切動作の改善が目的となります。


2. 練習で助走歩数を増やしたときの変化

助走歩数を増やした時のパフォーマンスの変化

助走歩数を増やすことで助走速度は増大し,跳躍距離は増加しますが,跳躍距離の増加量は徐々に小さくなります。

この現象を避けるためには,助走歩数を増やすことで踏切動作にどのような変化が生じているのか,把握しておくことが重要になり、上達に繋がります。

助走歩数を増やし助走速度が高まると,それに対応して踏切時間が短くなっていきます。




走り幅跳びにおいて良い踏切とは,「助走速度の減速を最小限に抑えて,大きな鉛直速度を獲得すること」であるため,高い助走速度へ対応するための踏切動作とは,踏切時間が次第に短くなり踏切が困難な条件下であっても効果的に鉛直速度を獲得することができるものです。

助走歩数を増やすことで求められる踏切動作

上述の踏切動作について,踏切中の身体を接地点と身体重心の位置を結んだ線分へモデル化したバネモデルから検討してみます。

このバネモデルを用いることで、複雑な身体の動作を,短縮-伸長運動(踏切接地とともにモデルが短縮し,その後離地に向けて伸長すること),回転運動(踏切接地点を中心としてモデルが逆振り子状に回転すること)の2つに簡略化して検討することができます。

このモデルから検討した結果,短助走から歩数を増加させ速度を高めた時でも跳躍距離の増加をより大きくするための踏切動作として,以下の3つが示されます。

これらの動作は,踏切において助走速度の減速をできるだけ少なくし,高い鉛直速度を獲得するための動作です。

(1)踏切後半におけるバネモデルの伸長速度を高める(下肢を速く伸ばす)

(2)バネモデルの回転速度を高める

(3)バネモデルの回転範囲を小さくする

短助走から助走歩数を増やし,跳躍距離を大きく増大するためには,歩数の増加に伴って上記の3つの動作が強調されていくことが重要になります。

これらの動作を導くための注意点としては,踏切足の接地位置が身体の遠くになりすぎないこと,踏切脚の屈曲を大きくしすぎないこと,脚や腕の振込動作を速くすることなどが挙げられます。

このようにして、初心者の場合、とくに練習で「助走歩数」を充分考慮してから走り幅跳びに入るのが無難でしょう。