「走り幅跳び」での「科学的解析によるアプローチ」について説明します。


1. 「科学的解析」に対する考え方

ここでの科学的解析は、ビデオ映像解析に基づく「データ解析」を中心に述べます。

陸上競技における走り幅跳びの特性は、助走によって大きな水平速度を獲得し、踏切によってその方向を直角方向(斜め上方向)へと切り替え、どれだけ遠くへ跳ぶことができるかを競う競技です。

走り幅跳びを局面構造に向けてみると、助走、踏切、空中、着地の「4つの局面」におけることが可能です。

走り幅跳びのパフォーマンスを向上させる決定的要素として、「速い助走速度」の獲得が必要です。

しかし、走り幅跳びにおける助走は単に疾走速度を高めるだけではなく、それを生かすための効果的な踏切が出来る技術の修得が必要となります。

その踏切準備は、助走で獲得された水平速度の減少を最小限に抑えながら身体重心を下げ、踏切で 直速度を獲得することにあります。

この重心をどれだけ下げるかも重要なポイントです。

なぜなら、下げすぎるとそこでエネルギーの損失を生じるからです。

速度変化に関して助走における水平速度は踏切前に最大になり、踏切1歩前でおよそ6%の速度減少があります。

また、一流走り幅跳び選手の助走は、地面のキックを行う支持期の重心移動距離(支持期距離)ならびに支持時間が短く、非支持期が長い傾向にあります。

このため滞空時間比(非支持時間/支持時間)が、短距離選手に比べて、非常に大きくなっています。

さらには、踏切準備から踏切に向かってのピッチが早まり、ピッチをいかした助走を行っています。

従って、踏切においては水平方向の走度を低下させることなく、効率的な上方向への直速度を獲得することが、よりよいパフォーマンスへつながります。

また、踏切時には助走で得られた大きな水平方向の速度を急激に斜め上方向への速度に変換しようとするため、身体は前方向への回転運動が生じます。

これを打ち消すための手段として、空中フォームが挙げられ、前方回転力を相殺しています。




これらのことから、走り幅跳びのパフォーマンスの向上のためには、自己の疾走能力を十分助走に生かします。

なおかつ踏切準備局面においてその速度の減少をいかに抑え、スムーズな踏切を行うことが必要不可欠な問題になってくると考えられ、これが上達のポイントになります。

しかしながら、これら走り幅跳びの技術をそのまま現場で生かすためには専門的な知識が必要となります。

従って、走り幅跳びの記録に直結する要因である助走局面と踏切局面に着目し、技術が未成熟な初心者と、走り幅跳びを専門に行っている陸上競技選手との比較を行うことにより、現場における初心者に対する記録向上を含む考え方となります。


2. 解析の結果からわかること

走り幅跳びにおいて最もパフォーマンスに影響すると考えられる「準備局面(助走、踏切準備)」と「主要局面(踏切)」に着目します。

そして、2つの局面構造を初心者と陸上競技選手で比較することで、助走の疾走速度と踏切の技術的要素が走り幅跳びのパフォーマンスに与える影響を検討し、現場における走り幅跳びのポイントを探ってみます。

走り幅跳びの助走の最終局面から踏切までの撮影はビデオカメラを使用し、動作解析システムを用いて動作をコンピュータに取り込み、2次元4点実長換算法によって解析を行います。

走り幅跳びは、1回の跳躍でより遠くへ距離を競い合う種目です。

助走において高い水平速度を獲得し、水平速度の低減を最小限に抑えた踏切をもって、直方向の速度を加えることで、より遠くへ飛ぶことが可能となります。

それで、高い助走速度の獲得が跳躍距離の獲得には必要となります。

助走速度の遅い初心者よりも速い専門群の方が、走り幅跳びの跳躍記録が高く、助走局面における最高助走速度と走り幅跳びの記録との間に正の相関関係があることからも、高い助走速度の獲得が走り幅跳びの跳躍距離の向上には必須です。

これらの結果から、走り幅跳びのパフォーマンスには高い疾走速度の獲得が、上達するために非常に重要なものとなります。

このように、科学的解析により、走り幅跳びには何が必要かという事実を知り、納得することが記録を伸ばす上で非常に大事となります。