「走り幅跳び」の跳び方の基本となる「空中姿勢」について説明します。
何故、空中動作を行うのかを言うと、「有利で適切で確実に着地姿勢をとるため」です。言いかえれば、着地のための準備動作です。
この空中での動作ができないと、体はかなり跳んでいるにもかかわらず、尻をついたり手がついて距離がでません。
初級者の中には、空中動作を行うことで跳躍距離が伸びるかのように勘違する人がいますが、どれだけ空中で頑張ったところで、飛距離自体は変わりません。
変わるのは姿勢です。物理のエネルギー保存の法則というものがあり、走幅跳という運動も、その法則が適用されます。
基本的に、走り幅跳びは、助走で得た水平方向に働いているエネルギーを、踏切で垂直方向に転換する運動です。
どれだけ空中動作を頑張ろうと、空中では、新たにエネルギーを得ることができないのです。
1. 「空中姿勢」の3つの典型事例
空中姿勢は大きく3つに分類され、自分に合った跳び方を選びます。
かがみ跳び
これは、初心者に最も適しています。
踏み切り後、その姿勢(自然な姿勢)を空中で保ち、着地時に両足を前方へ伸ばします。
リード足の膝は踏み切り時の位置を保ちます。
踏み切り足は、着地準備に入るまで後ろに位置します。
空中の後半から踏み切り足は前方へ展開します。
というより、とにかく前方に放り投げればいいのです。
そり跳び
おそらく最も多い跳び方になります。
中級者の方が好んで使われています。
空中で両腕を上方へ伸ばし、両足を後方へ曲げることで体を反らせます。
着地の瞬間に体を前屈させることで、前方にわずかに前進することができます。
助走の跳び出しはかがみ跳びと同じですが、空中でリード足を下げることにより腰が前方へ押し出されて、最高到達点で体を反らせた状態になります。
その後、両腕は高い位置から下方から後方へスイングして着地に向かいます。
はさみ跳び
7メートル以上跳ぶような上級者に適しており、手足を助走動作の延長で動かし続けます。
踏み切り時の前に投げ出される勢いを手足を動かすことによって打ち消し着地動作につなげていきます。
足の回転回数は、1回半、2回半、3回半など、選手によってさまざまです。
2. 空中動作の意識のはなし
実際の滞空時間は数秒なのですが、競技者は数十秒~数分の時間のように感じられ、ずいぶんと長くいるようになればしめたものです。
脳の活動時間なのです。
空中でも考えることができるのです。
できるだけ長く考えることができるようにしなければなりません。
空中動作で腕を回転させたり、体をそらせたりするのは、つまり、踏切の起こし回転で生じた前方回転力を打ち消してやるためです(力学でいう中和とか調和です)。
踏切では、意識的に少し後傾した姿勢から体を起こすような動きが出てきます。
そうすると、上体を後ろから前に回転させるエネルギーが生じるのです。
これは体を垂直方向に引き上げるために有効なエネルギーなのですが、そのままでは、空中でどんどん上体が前に回転してしまい、頭から砂場に突っ込む状況になってしまいます。
明らかに着地で距離を損してしまいます。
普段の練習で、ドリルなどで丹念に動き創りをしているし、実際にその動きが跳躍に出ていることもあります。
しかしその注意すべき部分は、助走のスタート局面、もしくは踏切の瞬間を意識したものです。
そうした意識を持ってドリルなどを行っている人でも、着地動作に問題を抱えています。
具体的には、踏切から空中動作に移行していく中で、目線が着地地点に移ってしまい、結果として状態が被った着地姿勢になるのです。
ここでの問題は、上体が被ることによって、腰が後ろに残ってしまい、脚を前方に投げ出すことができなくなります。
この場合、踏切の瞬間は前方(意識的には上を見る感じ)に視線が向いていますので、これを維持することが大切です。
人間の身体は頭の向きに大きな影響を受けますので、この頭の位置を適切な状態にしておくことで、適切な着地姿勢に結び付けることが可能となります。
空中姿勢とは、手足をバタバタさせたり、そったりすることだけを指すものではありません。
当然に、その時の頭の位置、目線の適切な角度なども含みます。
目線であれば、運動能力などに関係なく修正できるものですし、記録などへの貢献する程度が大きいのです。
3. 空中動作って難しいです
やらなければ上手く着地できないですし、逆にそこばかり気を付けても、他がおろそかになります。
大切なのは、自分が「何のためにその動作を行っているのか」または「なぜその動作をおこなわなければならないのか」を適切に理解することです。
その理解を前提に、自分の跳躍、助走のスタートから着地し、ピットから離れるその瞬間までの間のどの段階に問題があり、どうすれば今以上に記録を向上させることができるのか探究することです。
その上で、空中動作に問題があるのであれば、積極的に修正の方向に向かうべきです。
今一度自分の動きを再確認してみても良いのではないかと思います。
このようにして、空中動作では、何が問題なのか、どうすればいいのかをよく考えることが、次の着地に入ることができ、結果として距離が出るのです。